ホワイトスポット(白斑、シミ)

歯の表面に時々見られる白い斑点(白いシミ)をホワイトスポットといいます。ホワイトスポットができる原因にはいくつかありますが、ざっくりと分類すると、虫歯とそれ以外に分けられます。


ホワイトスポットの原因

(1)虫歯が原因のホワイトスポット
 初期う蝕(初期虫歯)によるホワイトスポット の特徴は「表層下脱灰」と言われる現象です。虫歯菌が作り出す酸によって歯のリンやカルシウムが溶け出すことを脱灰といいます。これが虫歯の始まりですが、初期の虫歯では脱灰は生じていてもまだ穴はあいていません。歯の表面は溶けないで内部から溶けていくのです。この状態が「表層下脱灰」です。表層下脱灰が生じている部分は、脱灰によって細かい空洞がたくさんできていて軽石のようになっています。この部分に光が当たると健全な部分とは光の屈折率や透過性が違うので白く見えるのです。
(2)その他の原因のホワイトスポット
 乳歯に外傷や感染が起こるとその下に待機している永久歯に影響を与え、ホワイトスポットが生じることがあります。また、生まれて間もない頃にかかった病気や栄養障害、遺伝などが原因で歯の表面のエナメル質が正しく作られなかったことにより、その部分がホワイトスポット になることがあります。これらはすべて「エナメル質形成不全」と呼ばれます。エナメル質形成不全は虫歯ではありませんので脱灰は生じていません。エナメル質が正しく作られなかったためにその部分だけ結晶構造が乱れ、健全な部分とは光の屈折率や透過性が違うので白く見えるのです。エナメル質形成不全では、その部分が茶色くなることも多く、その場合は「ブラウンスポット」と呼ばれます。
(3)フッ素の過剰摂取によるホワイトスポット
 生後6ヶ月から5歳くらいまでの歯の発生期に過剰のフッ素を摂取すると歯の表面に白や茶色の斑点ができることがあります。これは歯牙フッ素症(斑状歯)と呼ばれるものですが、水道水のフッ素化が行われていない我が国ではほとんど生じることはありません。なお、歯牙フッ素症はフッ素を飲み込むことにより生じるもので、フッ素塗布では生じません。

ホワイトスポットには上の写真のように1歯または数歯だけに生じる場合と、下の写真のように多くの歯に生じる場合があります。


ホワイトスポットの治療法

ホワイトスポットは進行性の虫歯ではありませんので、その多くは治療の必要はありません。審美的な問題を解決したい場合が治療の対象になります。治療にはいくつかの方法があり、それぞれ利点と欠点があります。
(1)フッ素やMIペーストの使用
 初期う蝕は歯磨きの不良が大きな原因です。まずは正しい歯磨きを行い、食生活を改善することが最も大切です。そのうえで、フッ素やMIペーストのようなケア製品を使用すると、溶け出したリンやカルシウムが再び沈着します。この現象を再石灰化といいます。再石灰化により、初期う蝕はほぼ健全な歯質に戻りますが、ホワイトスポット まで改善することは稀です。審美的に改善するためにはさらに踏み込んだ治療が必要となります。



(2)ホワイトスポットを削って詰める
 ホワイトスポットの部分を削ってその部分に白い詰め物をします。最も一般的な治療法ですが、歯を削る必要があります。エナメル質を削ると歯は途端に弱くなります。(詳しくは当HP「歯や神経を抜かない治療」を参照してください)そのうえ、詰めた部分を目立たなくするためにはホワイトスポットの周囲の歯もかなり削る必要があります。車の板金塗装と同じですね。詰めた材料には経年的に着色や変色、摩耗が生じますので、何年かに一度やり替える必要があります。最も一般的な治療法ではありますが、見た目を改善するために医学的には削る必要がない歯を削る治療であることを忘れてはなりません。
(3)ベニア修復
 歯の表面全体に薄いシェルのようなものを貼り付ける治療です。これには、ポーセレンラミネートベニアダイレクトベニアがあります。仕上がりはきれいですが、歯の表面を薄く削る必要があります。詳しくは当HP「補綴修復治療」をご参照ください。

(4)歯を削らない治療
 ホワイトスポットの治療法には歯を削らない方法が2種類あります。

 一つ目はエナメルマイクロアブレージョンという方法です。これは炭化ケイ素微粒子を含む6.6%塩酸でエナメル質表面を研磨することによりホワイトスポットを目立たなくする方法です。歯を削らない処置に分類されていますが、研磨ですので厳密に言えば歯を全く削らないわけではなく、例えて言えば、白斑が見えなくなるまでサンドペーパーで磨くイメージとなります。したがって、治療後は歯の厚みがわずかに薄くなります。エナメルマイクロアブレージョンを行った後はフッ化物バーニッシュという薬剤をを塗布します。通常数回処置を繰り返す必要があります。エナメル質表層0.2ミリ以内の着色や軽度のホワイトスポット、ブラウンスポットが対象になります。ホワイトニング後に白斑が目立つようになったということはよくありますが、そのようなケースにも適しています。ホワイトスポットが完全に消えるわけではありませんが、かなり目立たなくすることができます。ほとんどわからなくなることもよくあります。

 もう一つは低粘性レジン浸潤法という方法です。これはホワイトスポットを含めた歯の表面全体に浸透性の高い樹脂を浸み込ませる現在最もホットな治療法です。ドイツのDMG社が20年以上の歳月をかけて開発した「アイコン」という製品を使用します。歯を削るような処置は一切することなく、歯の内部に浸透しやすい特殊な樹脂を浸み込ませてホワイトスポット内部を均質な状態にします。歯全体に樹脂が浸透した状態になりますので、虫歯になりにくくなるという効果もあります。歯は全く削らないので、ホワイトスポットが完全に消えるわけではありませんが、ほとんど目立たない状態にすることができます。初期う蝕によるホワイトスポットが適応で、エナメル質形成不全にはほとんど効果がないとされていますが、当院では独自のテクニックにより、エナメル質形成不全歯にも対応しています。ホワイトニングと併用するテクニックによりブラウンスポットにも効果があります。上述のエナメルマイクロアブレージョンンよりもこちらの方が適応範囲が広く効果も優ります。

 「アイコン」を使用した治療は非常にテクニックセンシティブです。全く改善しなかったり、治療後にかえって目立つようになった例もたくさんあります。成功させるためにはマニュアルにはないさまざまなノウハウが必要ですので、実績のある歯科医院で治療されることをお勧めします。
 ホワイトスポット の治療は、最近までは何れの治療法も歯の切削を伴うものでしたが、エナメル質を削ると歯は途端に弱くなります。歯を削らないこの画期的な治療法を最初に行うことを強くお勧めします。
この程度の大きさのホワイトスポットはほぼ確実に消すことができます。もちろん歯は全く削っていません。低粘性レジン浸潤法で行いました。
こんなに大きいホワイトスポットもほとんど分からなくなりますが、このような重度のホワイトスポットは薬剤と労力が余計にかかるうえ、特殊な方法で行いますので割増料金となります。 この症例も低粘性レジン浸潤法で行いました。

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